FC2ブログ
The link at the date of the calendar is an entry.
プロローグ1-8
2009-02-27 Fri 22:12
今回はもう死ねるくらい長いです。追記のクリックは覚悟してください。

無理矢理2回で納めるために大量の文字祭りです。でも次回で本当に終わります。ようやくダヨー。TGIグッバイ。まぁ、これでまだプロローグっていう時点でもう。

そういえばボークス版ラインバレルが届いたりしてます。かっこいいです。でも重いです。アクションさせらんナイヨー。そのうちコトブキヤのと比較してみたりしようかしら。そんな今日このゴロ。




うん、アムナおばさんのとこに来てまだ1年と3ヶ月だよ。いいや、もう1年と3ヶ月。早いものだ。リハブ・スクールの2年間はまるで永遠のようだったのに。

僕は多分15歳くらいで捕まった。2247年だった。

その頃僕は仲間と車をバラしたり、Dピルをさばいていたんだけれど、どうも囮にされてしまったらしい。大口取引のDピルと一緒にコンテナに詰め込まれて番をしていたのに、クラスノフ社治安維持部隊がコンテナを開けて僕は逮捕された。

KSUの連中は最初僕が密売グループのヘッドか何かだと思っていて、随分手荒に扱われた。捜査官たちも厳しかった。それでも最初のうち僕はルール通り何も言わなかった。一言も声を出さなかった。

でも捜査官の一人が僕は囮にされたということを教えてくれてからは、全部しゃべった。

「当然だ。それでイーブンだな」

サイードは水タバコを取り出して葉を詰めている。
いや、別に仕返しとかじゃないよ。それに彼らもバカじゃないから、僕は正しい情報はほとんど持ってなかった。つまり僕がしゃべっても彼らは多分捕まらない。でも捜査に協力してればリハビリの期間は短くなるし、僕がヘッドじゃないことが証明できれば尚更短くなる。

「裏切られても友達は友達か。しかしオマエ15歳で随分とまぁ賢いガキだったんだな」

笑ってしまった。サイードは勘違いをしている。でも多分彼にはそんなこと説明しないほうがいい。サイードこそ、裏切られても友達を庇うに違いない。
サイードが差し出した水タバコを少し吸う。僕はたまに紙巻きを吸うくらいだったけど、この甘い水タバコも悪くない。

いや、実は僕一人で考えたわけじゃないんだ。僕を担当した捜査官がいい人でね。その人が僕に入れ知恵したんだよ。どうもKIAの薬物捜査課が密輸組織と仲がよくて、僕を主犯格に仕立ててこの件に幕を引こうとしたんだってさ。その捜査官がKIA内部の癒着を暴きたいから、協力すればリハブを短くできるようにするって言うから。で、結局レベル2のリハビリをクラスノフ第6リハブ・スクールで受けたんだ。

「そうか、じゃあプログラムでここに来てるのか?」

いや、プログラムは50年の夏に終わったんだ。でもそのあと勤めた仕事で事故っちゃってね。ほら、そのときに指なくしちゃったんだよ。

僕は左手の小指と薬指を失っていた。2250年6月にプログラムを終え、スクールの斡旋で就いた宅配の仕事でホバーバイクを運転中に対向車線のホバートラックに突っ込んだ。
リハブ・スクールで2年も過ごして以来僕は最悪の状態で、頭痛と吐き気とめまいがしょっちゅう起きて、ろくに眠れずにいた。スクールでも随分検査したり薬をもらったりしたのだが結局治らず、スクールの滞在期限も過ぎたので就職させられ、立派に社会復帰してしまったのだった。

しかし結局事故を起こし、今度は病院送りになった。ホバートラックのバンパーを直前で眺めている記憶から、目の前で丸顔のおばさんが僕の顔を覗き込んでいる場面の間には、実に一月半ほどの空白があった。僕は奇跡的に助かったものの昏睡状態にあったそうだ。

その昏睡から目覚めた時に目の前にいた丸顔のおばさんが、アムナおばさんだった。

「本当助かったのは奇跡だな。それであの孤児院に来ることになったのか?」

目覚めてから1ヶ月と少し、僕は入院していた。その間おばさんには本当に助けられた。僕の原因不明の頭痛や吐き気やめまいといった一連の症状をとても心配してくれ、いろいろな検査をしたのだけれど結局はっきりとした原因は分からなかった。
それでもおばさんは諦めずにいろんなことを試してくれた。なんかブディズムのサントラとか訳分からないのもあったけど。

数々の実験を経てどうやら僕は壁と天井で仕切られた空間が苦手らしいことが分かった。おばさんが僕を屋上へ連れて行ってくれて、僕はそこで昼寝ができた。すると僕の病気はあっという間に消えてしまった。

入院から3ヶ月、退院しても行く宛のなかった僕をおばさんが引き取ってくれることになった。おばさんは病院で働きながら孤児院を開いている。

「それであそこにいるのか。なるほど、孤児院にいる歳じゃないと思ってたけどそういうことだったんだな」

うん。それにあそこもおばさんだけの稼ぎじゃ苦しいから、僕も働けば少しは足しになるからさ。

「補助金は受けてないのか?」

受けてない。指定を受ければ補助金はもらえるんだけど、クラスノフの監査が厳しいし、孤児の流入が激しくなって余計に生活が厳しくなるから受けないんだってさ。

「どこの企業も似たようなモンだな。何もかも金、金、金だ。23世紀にもなってしかも氷河期まで始まっちまったのにまだ消費社会を続けてるなんて2、300年前の連中は思いもしなかっただろうな」

サイードは学生時代とても優秀だったらしい。聞いた話では奨学金でどこかに留学していろんな資格を持っているらしいんだけど、企業へは行かずにアシュラフさんの町工場で働いている。
企業が嫌いなのかい?

「好き嫌いで言うならね。コーポレートワールドなんてまだ出来上がって100年と少ししか経ってない。それなのにまるで人類の歴史が始まって以来ずっと続いてるような顔してる。資本が世界を支配するなんて俺はおかしいと思うんだ。俺たちは商取引や契約で毎日を生きてるわけじゃない。そうだろ?巨大複合企業が分割支配する世界なんて長くは続かない。この体制の中で虐げられている人々がいつか必ず立ち上がる」

そうだね。大体水が酷すぎるよ。僕たちはボトルドウォーターなんか買ってられない。それなのに水道から出る水を飲むのにもフィルターを買わなきゃならないなんてむちゃくちゃだよ。

「そうさ。俺たちは消費単位なんかじゃない。生きた人間なんだ」

彼の気持ちは分からなくはない。僕も今朝フィルターを取り替えながら無性に腹が立った。けれど分からないのは、立ち上がるのは誰かということだ。僕たちも貧乏くじを引いてるほうだけれど、立ち上がるのは無理だ。僕らにそんな力はない。僕らよりもっと酷い立場の人たちのことなら、その人たちは尚更立ち上がれはしないだろう。日々の食事が精一杯で、隣の子供が餓えて自分たちのパンを盗みでもすれば棒で打ちのめすに違いない。

飛行機の飛ぶ音が聞こえてきた。何かおかしい。3機が寄り添って飛んでいる。
サイード、あれなんだかおかしくないか?

「戦闘機だな。多分連中もピリピリしてるんだろう。ダイメックが武力行使に移るとは俺には思えないけど」

 武力行使?

「ニュース見てないのか?先月通商連合ができたろ?統一政府やダイメックが怒ってるんだよ。統一議会でも批難決議やらが出てて、いろいろとゴタゴタしてるのさ」

 通商連合はこのアラビア自治区やインド自治区とクラスノフ社、アルゼブラ社が固まったものだ。なんだかクラスノフやアルゼブラの物が安くなるって聞いたけれど、今のところ物価は変わっていない。

「経済共同体って建前だけど、実際には統一政府に対する独立宣言さ。議会も政府もダイメックの支社みたいな物だからな。不利な条件に追いやられていたクラスノフも我慢ならなかったんだろう」

クラスノフ社には同情的なんだね。サイードは鼻で笑って、

「企業は嫌いだけどその中でもダイメックはダントツに大ッ嫌いだからな。敵の敵は味方さ。さて、たばこも終わっちまったし、帰るか」

まだ14時半。いったい何をしに来たのか分からないけれど、多分彼に聞いても結局分からないだろう。彼はこういう時間の使い方が好きらしい。頼むから帰りはのんびり走ってくれよ。

「来るときものんびり走ったんだけどな」

サイードからモブを奪いとる。
僕が運転するよ。ぼ、く、が、と強調して言ってやった。

「夕飯には間に合うように頼むよ」

とぼけやがって。








ただいま。

「おかえりセイフ。何してきたの?」

ハナーンは本を読んでいた。彼女は勉強家だ。学校は初等学校の途中までしか行っていないらしいけど、働きながら自分で勉強している。

それが何をしてたのかよく分からないんだよ。あ、お弁当ありがとう。サイードも喜んでたよ。

「よかった」

ハナーンが笑っている時は気分がいい。僕は彼女の笑顔が好きだ。ポケットに入れた小さな袋を引っ張りだして、彼女に差し出した。

これ、サイードがくれたんだ。本物の砂糖だよ。なんとかっていう草からつくられるんだってさ。僕はもうもらったから、ハナーンにあげるよ。

「でも本物のお砂糖ってすごく高いんでしょ?いいの?」

サイードも誰かからもらったんだってさ。で、僕もサイードからもらったんだ。貰い物だから遠慮はいらないよ。彼女は袋の口に顔を近づけて鼻をくんくんさせている。

「すごくいい匂いね。じゃあこれを使ってお菓子を作ってみる。みんなで食べようね」

でも分ける程数がないから、ハナーン一人でもらっちゃっていいよ。いつもがんばってるしさ。

「少しずつでもみんなで分けたほうがきっと楽しいよ。おいしいお菓子作るから期待してて!」

そういって笑うと、彼女はキッチンに入って行った。

僕は体の中心がじんわり重く、脆くなっていた。僕は一人でシャイに4つも砂糖を入れた。でも彼女は同じ4つをみんなで分けると言って笑っている。僕はそんなこと思いつきもしなかった。





ハナーンはパンケーキを作った。夕食の後で出された。生地はいつもと同じに作って上にカラメルを塗り、本物の砂糖はその上にまぶしてあった。
僕は自分のパンケーキを少しずつちぎって全部みんなに分けた。ハナーンはどうして食べないのかと僕に聞いた。僕は答えられなくて、ただ、いいんだ、と言って部屋に戻った。

なんでこんなことをしているのか分からない。グループにいた時は食事の配分でズルをした奴をみんなでボコボコにした。でも僕も隠れて他の奴のチョコバーをくすねたりしていた。あのパンケーキをどうして僕は食べなかったんだろう。僕はハナーンのようにはなれないのに。もうパンケーキを分けたことを後悔しているのに。

ハナーンがキッチンでお菓子を作るのをそばで見ていたかった。一緒に手伝いたかった。4つの砂糖をみんなに分けながら笑いたかった。でも僕にはそれはできない。僕は4つとも、自分で食べてしまったんだ。
スポンサーサイト
別窓 | お話 | コメント:2 | トラックバック:0
<<心を亡くすと書いて忙しいと読む | dieselpower | 復活だぜぃ。>>
この記事のコメント
いや マジでおもしろい っていうか、セイフの気持ち、よく
わかるなぁ…何の気無い自然な優しさに触れ、感じる劣等感…
マイナス思考のセイフはこのあと、こんな風に考えたきがします
「…ゴメン、ハナーン…君の優しさにボクを傷つけさせて
しまった…君はボクを傷つけようとしたわけじゃないのに…」
こんな感じのヤツな気がする…すいません 勝手な想像♪
いや、マジでキャラの生きてるいい話だ!続き早くよろしく!
あ、哲学、オレもちょっと好きっす!古代ギリシアの
自然哲学あたり。ミレトスの三大哲学者あたりな。
2009-03-03 Tue 22:12 | URL | 六畳一間 #WzzJX4NY[ 内容変更]
>六畳 一間さん

ぎゃーーーこんな駄々長い駄文を読ませてしまってすいません!キリも悪いし長いし暗いしよくわからんし長いし。


自分で書いてるものを自分で解説してたら元も子もない訳ですが、彼は一概にマイナス思考とは言えないんじゃないかというのが僕の感覚です。
後々、多分プロローグ2を挟んで本編のどこかで誰かが語ってくれるんじゃないかと思ってますが(オイ)、彼はこの時代の様々な生き難さを背負っています。今回彼が語ったのはその一部に過ぎません。
現在のアムナおばさんの孤児院における生活はそれまでの彼の生活とは大きく違います。この孤児院での生活はそれまでの彼の生活と比べ、物質的にもおそらくは精神的にも豊かなものであるでしょう。何よりもこの世界(コミュニティ)には持続性が期待できます。プロローグ1での彼はこの世界にすでに1年3ヶ月を過ごし、これに適応しつつある状態です。これは決して適応が足りないのではなく、明らかに過剰適応です。この過剰適応は彼の経験による所もあるのですが、それはいずれどこかで語られるんじゃないかなぁ、うん。

>ミレトスの三大哲学者

すげぇww ソクラテス以前じゃないスかwww

僕は不勉強な故もっぱら現代ですね。ポストモダンな人たちのお世話になってます。えぇ、最初はフレンドリーな付き合いをしていくつもりだったのに今や半分まで蛇に飲み込まれた蛙状態です。本読んでると、きしゃぁぁぁぁとかいう人外の声が聞こえて参ります。助けてもらおうとしたのに殺されかかってますハイ。

って気づいたらコメントも相当長くなってるアホなわし。
2009-03-07 Sat 01:14 | URL | Edison #-[ 内容変更]
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| dieselpower |